書き初めは、筆始め、吉書、試筆、試毫、初硯などともいって、新年になって初めて字を書く行事です。古くは、宮中で2日に「吉書始め」の儀式が行われていました。今では主に、新年にふさわしいめでたい言葉を選び、書き初め用の縦長の紙(小画仙八ツ切り)などに書くようになりました。 江戸時代の寺子屋では、
1月5日に若水(正月の朝早く汲む水で、若返る力がある)で墨をすり、菅原道真(書道の神様、学問の神様)の画像をかかげ、めでたい詩句を試筆しました。詩では、慶滋保胤
(よししげのやすたね)の、
「長生殿裏春秋富 不老門前日月遅」
(長生殿の裏には春秋富み、不老門の前には日月遅し)
の句を、和歌では、
「わが君は 千代に八千代に さざれ石の いはほとなりて 苔のむすまで」
を書くのが最も普通だったようです。(『和漢朗詠集』巻下 祝 所収)
宮中では、1月15日に「御吉書三毬打」といって、書き初めを三毬打(さぎちょう)に投げ入れて焼く行事があったようです。今日の左義長(どんど焼き)での「吉書揚げ」の行事として、民間でも行われているものです。書き初めを竹の先につけて左義長の火で燃やし、空に高く上がれば上がるほど手が上がる(字が上達する)といわれています。 |