師範試験・昇段昇級試験の審査基準について
●受験作品の審査基準と評価、観点
一、臨書課題は、まず形や一字の造形の傾き加減、点画の肥痩に留意あること。
一、文字の大小変化と運筆の遅速、強弱に音楽的な纏りあるもの。
一、用筆については特に始筆(起筆)の表情と筆鋒の定着加減を問題、課題とされ、線質の変化、墨色美の充実をはかられたい。
一、高段位の方は、これを一層作品化し魅力あるものにされたい。特に墨継ぎの位置の決定、墨量の工夫をされたい。
※次は予め念の為、順序よく審査の観点を羅列しておきますので練習の階梯、目標として下さい。
1、形をよく似せる(臨書)
2、点画の太い細い
3、文字の大小
4、点画の曲と直
5、纒めとして余白の思考
6、速筆遅筆と呼吸の完成
7、用筆の工夫
A 起筆、鋒の定着、変化
B 握管の強弱
C 筆管の傾斜
D 腕手、臂肩、妙用
8、配墨の妙用
9、筆意、創造の高揚
上の項目をよく留意の上、制作にあたってください。臨書は原本を自分の目で見ることはもちろんですが、意臨ということにも配慮してください。創作は芸術の創造ということですので、手本の丸写しは芸術の盗作です。自らの書風を磨いてください。師範の学生課題は、学校教育書写の現状をよく勘案してください。
なお、紙墨の調和にも留意してください。漢字はなるべく淡墨(墨色の薄いもの)は避け、紙も中国画仙紙の良質のものを使用してください。仮名は仮名専用の紙を使用し、和墨を丁寧に硯で磨ってください。
『書芸中道』昭和55年10月号より(表現を変えた箇所あり)
●落款と押印について
落款(らっかん)は、署名と押印を含み作品全体を効果的に仕上げるための大切な表現方法です。自己表現として最低限のことを記すべきですが、余分なことを書いて作品全体を損なうこともあります。最も自身の素地が出るものです。よくよく考慮して記してください。
段位者には、押印を求めます。押印には細心の留意をはらってください。印泥の状態にも注意し、敬虔な気持ちで置くことを望みます。
硬筆においても同様です。
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